宇宙兄弟電子書籍コミック漫画の感想レビュー・口コミ

宇宙兄弟
『宇宙兄弟』を読むとなぜ元気が出てくるのか

ここ10年の私にとってのNo.1電子書籍コミック化された漫画は小山宙哉先生の『宇宙兄弟』です。映画化、アニメ化もされてすっかりメジャーな作品になってしまいましたが、多くの人にあの名作が読まれているのはとても嬉しいことです。読むと元気がもらえる、人を信じてみようと思える、そんな漫画がいつの時代にも必要だと思います。
傑作漫画は数あれど、なぜ『宇宙兄弟』には読者の心にそんな影響を与える力があるのでしょう? それはおそらく、あの作品の中には悪人が登場しないからではないでしょうか。
漫画でも小説でも、ストーリーを面白くするのは実は意外と簡単なのです。最も手っ取り早い方法、それは悪い奴、嫌な奴をたくさん登場させること。そのキャラクターたちを使って、主人公を苦しめ、次々とピンチに陥れること。そういうやり方で面白いストーリーを作っている作家さんはたくさんいます。
しかしそれでは、たしかにスリリングで面白い作品にはなるかも知れませんが、読んだ後にとても嫌な気持ちが残ります。人間誰しも、悪人を見て幸せな気持ちにはならないはずです。読んで気分が悪くなる物語なんて、結局は多くの人に愛される作品にはならないでしょう。
しかし『宇宙兄弟』には決定的な悪者というのは登場しません。最初に主人公の六太をクビにした上司が嫌な奴ではありますが、その上司も後に六太の協力者になります。選抜試験で宇宙飛行士の座を争った一人である溝口という青年は、自信家のかなり嫌味な奴ですが、やはり後に己の未熟さを思い知り、成長して六太たちを応援する立場になります。
悪人が出てこない。これは面白いストーリーを作る上ではかなりのハンデになります。悪人をどしどし出して主人公を苦しめた方が簡単に面白くなるのです。しかし『宇宙兄弟』はそういう安直な手段には頼っていません。ほとんどの登場人物が、自分たちの夢や職務に純粋に向き合っています。だからこそあの作品は、読んだ後に嫌な気持ちになりません。六太をはじめとした登場人物たちに「夢を諦めないことの尊さ」や「仲間と力を合わせることの素晴らしさ」を教えてもらい、生きる元気をもらえるのです。